8/22 目的

 昨日とはうって変わって朝10時にホテルを出発しました。行き先について、グヌンハリムン・サラク国立公園管理プロジェクトの調査だと予め説明を受けていました。

 ジャカルタから高速道路を1時間10分、到着したのは役所らしき建物。その中の一室に通されて、日本人の「所長」から40分間、ダラダラとした説明。

 私は、説明が終わるなり、所長に尋ねました。「何に関する説明をして頂いたのですか。主語が判然としないので分からない。インドネシア政府の国立公園に関する政策ですか?私たちは日本のODAの調査に来ました。日本人の税金がどのように使われているのか、確かめに来ました。日本のODAが何をしているのか説明がありましたか?それに、そもそも、ここはどこですか?説明を頂くだけなら、東京で十分できます。私たちは税金を使って調査に来ている以上、現物を見ないと意味がない。ここに、インドネシア人がひとりもいないのはなぜですか?現地の人々の要望、希望、苦情を聞かないと意味がない」

 同行の議員からも、「おれ達は物見遊山に来ているんじゃない。いい加減にしろ」とクレームが続きました。そもそも、私たちは技術的、専門的な事項には関心さえありません。素人が口をはさむよりも、専門家にお任せすればよいこともあります。私たちの調査は、日本人のODAの現状です。現地の人々に喜んでもらえているか、役立っているか、友好平和に資するか、日本の国益となるかです。

 大使館は3日で帰る「お客様」にはサッサと通り過ぎて欲しい、自分たちのやっていることを批判されたくないのでしょうが、国民の血税を費やしている以上、厳しいチェックが必要です。Plan・Do・Check、民間では当たり前のことです。

 また、この日本人所長も一所懸命働いておられることは分かりましたが、大変失礼ながら、趣旨や目的を全く理解できていないようです。

 最近、大臣の命令でグヌンハリムン・サラク国立公園の範囲が広くなりました。国立公園内には10万人が暮らしていますが、国立公園は日本と異なり全て国有地です。これらの人々は違法占拠です。家畜のヤギを食べられた村人が、絶滅危惧種であるヒョウに怒ってヒョウを殺してしまいます。その対策が必要です、という説明があり、私は唖然としました。

 大臣の一片の命令以前に、何千年に亘る人々の生活があったはずです。それなのに、大臣の命令で、人々の所有権が消滅し、生活権が消えて無くなると、この所長は本気で思っているのでしょうか。本気で思っていて、まさに「善意」で「違法占拠」の村人たちを追い出すことに手を貸しかねません。

 私は、この所長を見ていて、「坂の上の雲」に描かれた伊地知幸介第三軍参謀長も、こんな人ではなかったのかと思ってしまいました。

 

 昼食の後、訪ねたのはジャカルタ郊外にある生物多様性保全センター。日本からの無償資金援助2062万円で、鉄筋コンクリート造の生物多様性保全センターの研究棟が建設されました。

 しかし、隣に同センターの事務棟があり、こちらは、現在、インドネシア政府の資金で建設中です。なぜ一方は日本の無償資金援助なのか。インドネシア政府では建設不可能だったのか。当然の疑問です。しかも、このセンターの建設工事を請け負ったのは、日本の大成建設です。またしても、日本の企業の利益のために、ODAが隠れみのになっていないか、疑わざるを得ません。

 

 次に、やはりジャカルタ郊外に建設中のデポック車庫建設工事現場を訪ねました。

 日本はインドネシアの鉄道建設のために、何と1300億円の円借款を実施しています。この車庫建設もその一環です。92億円を費やして、三菱重工や日立プラント、住友商事のJVで建設されています。

 

 午後6時過ぎにようやくホテルに戻り、休む間もなく、大使公邸に移動しました。夕食は大使公邸で、海老原大使や渡辺公使らと懇談しました。昨日のこともありましたし、今日の不手際も言いたくありませんでしたが、大使に申し上げざるを得ませんでした。

【前川きよしげ本人が書いています】