財産分与
こちらでは、令和6年に改正された民法のうち「財産分与」に関する改正点をご紹介します。
なお、今回も改正前の民法を「旧法」、改正後の民法を「新法」と表記します。
離婚に伴う「お金」
財産分与の改正点をご説明する前提知識として、夫婦が離婚したときに動く4種類のお金についてご説明します。
①〔慰謝料〕
1つは、結婚関係を破綻させた者(ザックリ言うと「悪い方」。例えば不貞行為を行った者)が支払う「慰謝料」です。
もっとも、日本の裁判所では高額な慰謝料を認めることはありません。ボリュームゾーンは200万円から300万円です。
②〔養育費〕
次に「養育費」です。例えば、離婚後、母が未成熟の子を引き取り、育てる場合、父が母に対して支払います。
養育費の額は、未成熟の子が負担義務者(上記の例では父)と同程度の生活水準を維持することができる金額です。最高裁は、養育費の相場に関して、父母の収入に応じた「速算表」を公表しています。
③〔財産分与〕
3つ目が、結婚期間中に蓄えた夫婦の財産の清算です。これを「財産分与」と言います。
財産分与の対象となるのは、結婚、同居期間中に蓄えた財産です。将来支給されるであろう退職金も財産分与の対象になります。
これに対して、結婚前から持っている財産や、相続で得た財産など夫婦の協力とは無関係に取得したものは「固有財産」と言って、財産分与の対象とはなりません。別居期間中に蓄えた財産も対象にはなりません。
④〔年金分割〕
離婚した夫婦間で直接お金が動く訳ではありませんが、「年金分割」という仕組みが創設され、平成19年から施行されています。ザックリ言うと、結婚期間中の年金の「2階建て部分」(サラリーマンであれば厚生年金)の保険料納付記録を原則2分の1ずつに分割する制度です。例えば、会社員や公務員の夫と、専業主婦の妻が離婚したケースでは、従来、妻には十分な年金が支給されませんでした。そこで、年金分割は、結婚期間中に夫が支払った厚生年金保険料に関して、その半分は妻が支払ったことにします。この結果、妻にも厚生年金が支給されることになります(その分、夫の年金は減ります)。
財産分与を請求することができる期間-2年から5年へ
以上を前提に、財産分与の改正点をご説明します。
旧法は、財産分与を請求することができる期間を、離婚から2年以内としていましたが(旧法第768条第2項但書)。新法はこの期間を5年に延長しました。但し、新法の施行日よりも前に離婚した場合は2年です(改正附則4条)。
財産分与の基準-原則折半
財産分与の清算割合は、財産形成や維持に関する各自の寄与度によって決まります。かつては専業主婦に関して、その寄与度は3、4割程度に評価されることが多かったのですが、次第に家事労働を高く評価するようになり、現在の実務では清算割合を原則として2分の1とする運用が定着していました。新法は「婚姻期間中の財産の取得又は維持についての各当事者の寄与の程度は、その程度が異なることが明らかではないときは、相等しいものとする。」と書き加えて、この実務の運用を明文化しました(新法第768条第3項)。
この点、とりわけ年配の男性からの不満をしばしば耳にします。「オレが働いて、稼いだカネなのに」と。
確かに、「昭和」の日本では、夫が外で稼いで、妻が家事や子育てを担当する結果、夫名義の財産が多く、妻名義の財産は少ない場合が多いと思いますが、家事労働に対する評価が高くなったこと、上記の通りです。また財産分与とは「生き別れ」時の清算です。「死に別れ」時の清算(=相続)において配偶者の法定相続分は2分の1ですから(子と配偶者が相続人の場合。民法第900条第1号)、「生き別れ」の場合も2分の1ずつが自然だろうと思います。