相続
1【相続のルール】
人が亡くなると、亡くなった人が持っていた不動産や預貯金などのプラスの財産も、借金や保証などのマイナスの財産も、配偶者や子どもらが引き継ぐことになります。このように人の死亡による財産の承継を「相続」と言います。
亡くなった人(民法では「被相続人」と言います)の財産を、遺族の誰が、どれだけ引き継ぐかに関しては、民法第882条以下に定められています。民法に従った相続を「法定相続」と言います。
亡くなった人が遺言を残していたなら、法定相続よりも遺言が優先しますが(民法第902条、908条第1項、第964条)、遺言がなければ、「法定相続人」が「法定相続分」の通り、亡くなった人の財産を引き継ぎます。
ザックリ言うと、遺言があれば、遺言の通り(但し、「遺留分」の制限)。
遺言がなければ、法定相続人が、法定相続分の通り。
2【法定相続人】
民法のルールによって相続人になる人を「法定相続人」と言います。
それでは、民法は誰を相続人と定めているでしょうか。
①〔配偶者〕
民法第890条には「被相続人の配偶者は、常に相続人になる。」と書かれています。したがって、夫が亡くなれば妻が、妻が亡くなれば夫が相続人になります。
なお、ここに言う配偶者は、婚姻届を提出した夫婦に限られます。「内縁」あるいは「事実婚」の配偶者は法定相続人になりません(最高裁決定平成12年3月10日)。
②〔子ども〕
民法第887条第1項には「被相続人の子は、相続人になる。」と書かれています。子は第1順位の相続人です。
子は認知された非嫡出子(結婚していない男女の間に生まれた子)や、養子も含みます。父が死亡した時、まだ母のお腹の中いた子(胎児)も生きて生まれてきた場合は相続人になります(民法第886条第1項)。
子が親よりも先に亡くなっている場合、孫が相続人になります(民法第887条第2項)。これを「代襲相続」と言います。
③〔直系尊属、兄弟姉妹〕
子がいない場合は、亡くなった人の直系尊属(父母や祖父母)が、直系尊属もいなければ兄弟姉妹が法定相続人になります(民法第889条第1項)。
3【法定相続分】
①〔妻と子が相続人の場合は1/2ずつ〕
夫が妻と子を残して死亡したとき、法定相続人は妻と子です(民法第887条第1項、第890条)。その場合、妻と子は2分の1ずつの割合で夫の財産を引き継ぎます(民法第900条第1号)。
このように民法が定めた亡くなった人の財産を引き継ぐ割合を「法定相続分」と言います。 子が2人いたなら、子の法定相続分、2分の1を2人で分けます(民法第900条第4号)。したがって、子1人の法定相続分は4分の1になります。子が3人いたなら、子1人の法定相続分は6分の1です。
②〔妻と父母の場合は妻が2/3〕
亡くなった人に子がいなかったら、その人の父母が法定相続人になりますが(民法第889条第1項第1号)、その場合、妻の法定相続分は3分の2、父母の法定相続分は3分の1です(民法第900条第2号)。
③〔妻と兄弟姉妹の場合は妻が3/4〕
亡くなった人に子も、父母もいない場合は、兄弟姉妹が法定相続人になりますが(民法第889条第1項第2号)、その場合、妻の法定相続分は4分の3、兄弟姉妹の法定相続分は4分の1です(民法第900条第3号)。
兄弟姉妹が2人いたなら、兄弟姉妹の法定相続分、4分の1を2人で分けます(民法第900条第4号)。したがって、兄弟姉妹1人の法定相続分は8分の1です。